独立行政法人の評価に関する一考察

要旨

本稿は、独立行政法人の評価制度をテーマに取り上げ、その課題と問題点を検証し、今後の改善点の展望を行うものである。独立行政法人制度は、中央省庁再編により、巨大官庁が誕生したことを受けて、行政組織の減量化を図ることを目的として創設された。自律した経営権限が与えられる代わりに、事後の業績成果が測定されるNPM型組織である。独立行政法人の評価は、中期目標・中期計画を対象にして多段階で行われるが、本稿では、ケーススタディとして経済産業省所管の独立行政法人産業技術総合研究所を取り上げ、独立行政法人のマネジメントと法人内部での自己評価から法に定める一連の流れを検証した。第1段階の自己評価では、産総研では、様々な先駆的な取り組みが行われており、独立行政法人のメリットを生かした成功例である。第2段階の外部評価の役割を担う評価委員会の評価では、主務省評価委員会、総務省評価委員会の役割分担が明確でなく、二重評価の形での問題点が見られる。第3段階の中期目標期間終了後に行われる業務全般の見直しは、評価結果よりも政治の折衝の中で、現実は決定している部分が多い。評価の重複の解消策として、主務省評価委員会は、所管独立行政法人の自己評価結果を生かした評価を外部からの視点で行い、総務省評価委員会は、全省庁的立場から独立行政法人制度全般に関する意見、経営のベストプラクティスを提言していくなどの明確な役割分担が必要である。また、評価の対象となる中期目標・中期計画は、政策目標の明示、主務大臣と独立行政法人の長との契約という位置づけを明確にした運用を行うことによって、両者の関係に緊張感を保つことが制度の目的である自律した経営権限と事後の業績測定という仕組みを生かすことになる。この3段階の評価が機能してこそ、NPM型組織としての独立行政法人のガバナンスが確立する。

Title:A Study of Evaluation of Incorporated Administrative Agencies

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