社会的企業(非営利)における事業継続性の考察-従来型評価の限界に対するバランス・スコアカードによるアプローチ-

中野 洋

Abstract


非営利組織(NPO)の評価の問題が数多く論じられている。本論はNPOのタイプとしては「事業型」に注目し、介護事業のような、必ずしも完全な市場対応ではなく、より公共部門と連携した「社会的企業」の事業継続性・可能性について考察し、非営利組織にどの様な評価が求められるかを、その表示の手法と非会計データによる管理手法の視点から、バランス・スコアカード(BSC)の活用を検討する。非営利組織も営利企業も共に社会的存在であることに違いはなく、必要な情報公開を行って多くの受益者やステイクホルダーから信頼を獲得することが重要である。特にNPOの場合、税金や寄付金といった公金を使う場合が多いため、納税者や寄付者に対する説明責任が必要とされる。また、営利企業以上にステイクホルダーが多いことから、積極的に情報を公開し、地域住民の批判を仰ぐ姿勢が必要となる。営利企業の場合、売上げや利益によってその経営状態が判断されるという外部チェック機能が働くが、NPOの場合にはそうしたチェック機能が制度化されていない。そのため、今後も税金や寄付を得るためには、資金を効果的に活用した事を広くアピールし、信頼を勝ちうるという戦略が必要である。非営利組織に求められる情報公開を考えると、会計情報には財務情報が示されているが、そこでは表せない有効性については会計情報以外の情報(事業報告書)ということになる。従来の経営分析手法がコスト分析に基づいた業務改革手法であるのに対して、BSCは、ビジョン・戦略を始点として、それを実現するための改善点を抽出する。このBSCによる評価プロセスを開示することで、非営利組織が抱える安全性のみならず真の効率性の開示の問題、すなわち説明責任や透明性が確保されるのではないかと考えられる。本論文では、第1に、社会的課題を、ビジネスとして事業性を確保しつつ解決しようとする事業型NPO(社会的企業)の概念を、その組織形態の多様性と事業継続性、取組む公益活動の成果とその評価という観点から論じてみる。第2に、社会的な要請で「NPOの評価」が必要とされだしたこと、また、NPOが社会の中で大きな役割を果たすには、ルール化された比較可能な評価が条件であることを考察する。ここでは、「NPOの評価」を事業評価と組織評価の視点から取り上げ、2つの観点から評価の目的と問題点、評価の在り方、評価のポイントを論じてみる。評価が持つ意義として、社会的企業の事業基盤の強化につながる評価のプロセスと評価のポイントを整理し、その事業と組織が持つアカウンタビリティと財源の多様性に言及してみる。第3に、BSCは、組織管理の側面でトレードオフを引き起こしかねない項目をバランスよく再編し、組織の成果を財務だけでなく、非財務の側面から多面的にマネジメントし、評価することを狙いとしていること。すなわち、NPOにおいてBSCによる組織マネジメントの必要性とその事業成果に対し4つの視点から評価することの有効性について整理する。最後に、NPOの効率的経営には組織マネジメントの必要性から「コーポレート・ガバナンスの確立」が必要不可欠であること、そして事業活動評価と組織評価にBSCを活用することで、ステイクホルダーに対し財務、顧客、業務プロセス、学習と成長という4つの視点から、その組織が持つビジョンと戦略及び現在位置が開示可能なことを明らかにする。非営利組織の情報開示・組織管理の手段としてのBSCは、極めて有効な手法であり、その有効性を論理的かつ実証的に考察する。

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