住宅地型産業振興としての新世代農業のあり方-企業による農業(植物工場等)を中心として-

前田 浩成

Abstract


住宅都市は人口減少社会、老齢化社会を迎え、工業都市でも経験している産業空洞化の流れをうけて税収は減る一方であり、住宅都市における産業振興は曲がり角にきている。そこで、新たな可能性としての「農」に注目できる。現在現れつつある新世代農業は、新しい都市型産業であり、しかも大都市圏郊外の住宅都市にこそふさわしい特質を多くそなえている。本論文は、このような可能性を検討した。21世紀になって以下のような3つのトレンドがおこった。1)「旧来型農業の問題点と農制度改革」、2)「食の安全問題・地産地消意識の高まりによる農の復権」、3)「ハイテク農業技術の進展」。このようなトレンドによって、これまでの「農家だけの農業」から、「(A)市民参加による農業」と「(B)企業による農業(高度ハイテク農業)」を含めた農業への変化がある。本研究では、特に後者(B)企業による農業の都市における成立の可能性を、野菜工場技術を中心に探求した。その結果を筆者の他の(A)市民参加型農業に関する研究(前田[2011])とともにまとめると以下のようになる。【1】まず、2つの新世代農業の成立可能性について。(A)「市民参加による農業」は、「法による方式(「特定農地貸付法」「市民農園整備法」)」と「法によらない方式(農園利用方式)」に分類された。高槻市の事例を分析した結果、「市民による農業(レジャー型農業)」が成功しているモデルとして、(A1)ICTの活用-農の見える化、(A2)農の教育効果、(A3)市民農園をバックアップする農業制度改革の3点が重要であることを明らかにした(前田[2011])。(B)「企業による農業(高度ハイテク農業)」の代表である植物工場(野菜工場)については、本研究の結果、「完全人工光型」「太陽光利用型(「太陽光のみを利用するタイプ」)」「太陽光利用型(人工光と併用するタイプ)」に分類された。全国の植物工場の事例について、「キユーピー系列企業」「高松丸亀町商店街」「フェアリーエンジェル」「ベジーワーク」の例を分析した結果、コスト分析から最終価格が通常の野菜の約2.4倍と推計されるので、通常の野菜とまったく同じやり方は依然困難であるが、成功例を観察することにより、「企業による農業(高度ハイテク農業)」が今後成功していく方向性として、(B1)高付加価値化志向-漢方など(B2)、流通・販路の開拓-川下戦略、(B3)オランダ方式(施設栽培の高度化)の3点が重要であることを明かにした(本論文)。【2】また、2つの新世代農業が都市型(住宅型)にふさわしいかどうかの立地分析を全国でおこなった。(A)「市民参加による農業」の立地分析を、全国でおこなったところ、農業地域類型区分別では「都市的地域」が全体の7割強を占め、ブロック別では、「関東ブロック」が全体の約5割を占めることから、都市型であることがわかった。また、高槻市内においておこなったところ、水系、新幹線、山麓線の住宅地ぞいに立地していることがわかった(前田[2011])。(B)「企業による農業(高度ハイテク農業)」の代表である植物工場について、立地分析を、全国でおこなったところ、地目データのある29施設のうち、約76%にあたる22施設が「農地以外」、経済産業局区域で括った場合、34施設のうち約59%にあたる20施設が「関東」「近畿」管内に立地(大都市圏および周辺地域)などのことから、「完全人工光型」は都市型〈住宅地型〉産業であると言える。さらに、よりミクロに見るために、「完全人工光型(全国34施設)」及び「太陽光・人工光併用型(全国16施設)」について、工場と中心市街地間の道路距離を測定したところ、いずれも中心市街地への距離は近く都市型といえ、「完全人工光型工場」の方がより近い立地であるといえることがわかった。以上から、2つの新世代農業が都市型(住宅型)産業振興に向いていることを確認した(本論文)。

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