地方分権以降の自治体法務組織-国立市の法務担当組織からの一考察-

要旨

本稿は、地方分権改革により、自治体の自己決定権、自己責任が増大するなかで、自治体に 係る訴訟が増大する状況を確認し、法務組織の実態を把握した上で、組織構築の考え方を考 察するものである。最初に、自治体に係る訴訟の実状について、全国市長会が公表する資料 にて確認を行った。次に、先行研究による文献などから、自治体の法務組織の実態、自治体 法務訴訟と事務の区分についての論理を確認した。自治体の法務組織としては、都道府県に おいては、東京都のみに全庁一元的に訴訟法務を管理する法務管理組織が存在し、その他の 府県については、法務管理組織、事件に係る原課と事務の原課が共同して処理する、または、 事務原課による原則処理がなされている状況である。市町村においては、大都市の法務管理 組織において行政不服申し立てと訴訟事務のみを選任で処理する職員を擁するところがある ものの、訴訟法務を法務組織において一元的に集中管理するところは、少ないと推測される 状況である。自治体法務と事務の区分については、地方分権一括法により廃止された機関委 任事務に係る事務が、法定受託事務にどのように引継がれるかについて確認した。自治体が 処理する事務は、すべて自治体の事務とされたため、地方分権一括法以前の機関委任事務体 制での訴訟法務の区分と、法定受託事務体制での区分とを同様に考えることは難しいといえ る。自治体法務組織の構築については、自治体の法務組織の事例として、国立市の法務組織 の現状の確認し、その上で、経営組織論の視点もふまえながら、自治体法務組織構築の考え 方について考察を行った。
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