総合計画・行政計画とまちづくりの関係の新しい潮流−大規模民間開発や市民を組み込んだまちづくりに対応する行政計画に関する研究−

藤井 寿光

Abstract


本研究では、総合計画・行政計画とまちづくりの関係の新しい潮流について考察した。まず、2011年に義務がなくなった総合計画であるが、多くの自治体では継続しており、より必要性が高まったという見方もある。これまでよりも(1)より戦略性がもとめられる、(2)財政計画との連動(正負の都市計画)、(3)市民参加・協働性の強まり、などの傾向が期待される。現在では、基本のフレームが右肩下がりになっていく中で上の二つの計画が「重複化」(一体化・融合化)される傾向が顕著になってきている。総合計画策定と行政改革プランの策定が同義になってきているともいえる。なぜならば総合計画を策定するために既存の事務事業の整理・合理化からの資源の捻出が必要になっているからである。いわば「正負一体の総合計画」(=行政改革プラン)が多くなってきている。より経済経営的視点の強化、企業や市民の力を取り入れる都市経営のあり方がうかがえ、総合計画がフレキシブル化する。【1】実証分析として、東京都23区の総合計画のすべての分類論と変化、その時間的枠組みについてテキストマイニングという手法を用いて分析した。(1)施策項目内容的には、8分野(1.観光・文化系、2.建築・土木・住宅系、3.環境系、4.産業系、5.防災系、6.福祉系、7.教育系、8.市民活動・市民協働・行財政改革系)及び5分野(1.観光・文化系、2.建築・土木・住宅系、3.産業系、4.防災・福祉・教育系、8.市民活動・市民協働系)のパターンで把握される。(2)空間的には、総合計画体系図の施策項目の分野分布状況から以下の5つのタイプに分類できることが分かった。1)都心・副都心型(1.観光・文化系、2.建築・土木・住宅系、4.産業系)2)ベイエリア・臨海工業地帯型(2.建築・土木・住宅系、4.産業系)3)住宅地区・周辺区型(2.建築・土木・住宅系、6.福祉系、7.教育系)4)北部内陸工業型(2.建築・土木・住宅系、4.産業系、6.福祉系、7.教育系)5)観光地型(1.観光・文化系、2.建築・土木・住宅系、4.産業系)(3)時間的には、都市経営的項目、住民参加・協働項目、福祉項目、観光、環境等が増大している。(4)その他、特色ある区の例として、1)墨田区における総合計画(東京スカイツリー版)のような大型開発に伴う総合計画の策定、台東区における他区の大型開発(東京スカイツリー開発)をも取り込んだ総合計画の策定、2)文京区、江東区、千代田区に見られるような総合計画体系の2層構成化(基本計画、実施計画の省略)、3)文京区に見られる毎年度の重点施策の策定、4)新宿区における総合計画と都市計画マスタープランを一体化させた計画策定、5)港区における地区別計画の重厚化、6)千代田区に見られる区政課題集の策定、その他としては基本計画期間の前倒しなどがある。【2】つぎに特例として、計画期間に「スカイツリー」という都市構造を変化させるような、民間大規模開発が生起し、修正版を出した墨田区の例がある。まず、広域総合拠点で両国、錦糸町にくわえ、墨田中央エリア(スカイツリー周辺地区)が設定され、それらの拠点を中心として、多機能複合市街地である各拠点を各種施策でつなぐ事が図られている。そのための具体的な施策として、大横川親水公園を整備し、区内の南北の交流を拡大する。また、隅田川を運行する各種水運を利用した水上ネットワークを形成することも挙げられる。さらに、観光施策、交通施策として無料バスが運行されている。東京スカイツリーに来場された観光客に対して区内各地域を知ってもらうためのまち歩きや観光ルートが設定されている。なお、まちづくりの基本方針としては、「まちづくり方針(将来都市像の4つのテーマ)として掲げられており、その内容としては都市文化をたのしむまち(先進性と歴史)、安全安心で災害に強いまち(避難地・防災シンボル)、地球にやさしい水と緑のまち(環境共生・持続可能)、人にやさしい移動しやすいまち(ユニバーサルデザイン・交通ターミナル)となっている。すなわち、スカイツリーと水の軸を中心に、観光、文化、防災、交通が強化されたといえる。【3】次に、総合計画制度のフレキシブル化と民間力導入により、総合計画を越え、それを拡大補完する手法として「PPP(官民協働)」と「BID」をとりあげた。いずれも、アメリカが本家であり、特に「PPP」については、日本ではスポット的な企業連携が中心だが、アメリカでは、市民活動が中心で、しかも規模の大きい、総合計画レベルのPPPが多い。その本格的なものとしてニューヨーク・ハイラインの成功メカニズムをとりあげた。またBIDも、本当は本家のアメリカでは、地元からの一種のまちづくり徴税権(負担金)を公共が徴収し、BIDに振り分ける強力な財政手段があり成功の中心であるが、日本では、唯一大阪市が地方自治法の特例を利用して、うめきたで成功している。その例をとりあげる。

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