地域の中で持続するコミュニティFMの経営条件に関する研究

杉本 俊彦

Abstract


本研究は、全国のコミュニティFMを分類し、その廃局問題、経営問題を分析した。【1】開局の3つのピークは3大地震「阪神淡路大震災」「中越地震」「東日本大震災」直後。【2】開局特性は、大きく3期に分けられる。第1期(=1990年代の急成長期)は、近畿以東(のち中四国も入る)が中心で、公共応援の3セク中心で始まり、民間型がこれに続いて拡大した。九州・沖縄はほとんど開局がなかった。最初のコミュニティFMブームは、公共が主導し、東からの流行(北海道、本州中部(関東・中部・近畿)からはじまり、1990年代後半に東北と中四国が参加した)という形となったといえる。第2期(=2000年代前半の停滞期)は、開局数が、3セク型が全く無くなり、民間のみになった時期。第3期(=2000年代後半からの復活期)は西が中心で、民間中心となるとともに、NPO型が一翼を担う時期である。しかし3セクも若干回復している。すなわち、コミュニティFMは、典型形態としては、①(1990年代の急成長期)設立の近畿以東(のちに中四国も入る)、公共応援の3セク+民間型、②(2000年代前半の停滞期)設立の中部から西日本が中心で民間型、③(2000年代後半からの復活期)設立の中部から西日本が中心で、民間+NPO型、にこそ、経営のノウハウと課題が隠されている可能性がある。【3】廃局について。また中四国・九州は廃局が多い(8局と約半分を占める。)が、もともとコミュニティFMをやりたい企業家・民間人の多い風土であるといえる。第1期~第2期に、民間主体で開局したところが多い。激戦の風土の中から、以下の事例のFMきららグループ(宇部+福岡のコミ×テン)のように優れたビジネスモデルを開発し、一大勢力となった成功例がでてきた。【4】経営状況からみた近畿のコミュニティFM局の分類を財務諸表から分析をおこなった。(1)PL(損益計算書)系分析=フローの健全さをあらわす:<収入系>①経常収入、②公共団体からの支援(委託、補助)、③自主収入でこれで単年度の健全さをはかる。<コスト系>④経常費用(人件費・一般管理費)、⑤経常利益。(2)BS(貸借対照表)系分析=ストックの健全さをあらわす⑥出資総額(資本金)、⑦純資産、⑧累積損益→これで開局以来の健全さをはかる。(3)結論としては、近畿では、PL(損益計算書)的には、枚方、伊丹、八尾、BS的には、伊丹、枚方、守口、が健闘している。【5】つぎに、成功事例の分析をおこなった。【3セク型伊丹事例】(1)地域コンテンツ戦略。(2)メディアミックス戦略(フリーペーパー主体。フリーペーパー定型枠型作成⇒自動的にCM。フリーペーパー戦略:紙媒体によるCMを行うことで利益を上げる)。(3)デジタルサイネージ=ラジオの視覚化戦略(放送+フリーペーパーというメディアミックスと、デジタルサイネージの運営によるクロスメディア展開)。【NPO型和歌山事例】(1)地域コンテンツ戦略(+局の取材あり、取材は社員)。「番組の質」の向上のためパーソナリティの教育(自主防災会・地域協議会等、市民参加番組比率を上げる)。(2)メディアミックス戦略⇒IT活用を多くする(ユーチューブ、ユーストリーム、フェイスブック、ツイッター、ブログ)。(3)市場浸透型CM料金価格設定(マーケットイン)=CM料金500円。【民間型宇部事例】(1)地域コンテンツ戦略(取材あり、取材はパーソナリティがおこなう)。(2)メディアミックス理論=フリーペーパー(フリーペーパー定型枠型作成 ⇒ 自動的にCM)。(3)マーケットイン=市場浸透型CM料金価格設定500円(FMきららは放送+フリーペーパーというメディアミックスの運営方法をとっているが、この手法はどの放送局でもできるとは限らない)。【民間型福岡・北九州事例】(1)さらに進んだ地域コンテンツ戦略(+局の取材すらない『カラオケ理論』)スポンサーに自然な関連テーマでつくらせる、コンテンツ取材+企画まで、局はタッチしない(カラオケ理論)。(2)メディアミックス戦略⇒IT活用しきる(ユーストリーム、ユーチューブ、フェイスブック、ツイッター、ブログ)。(3)市場浸透型CM料金価格設定(マーケットイン)=CM料金500円。(4)経営多角化=地域ビジネスを行政と「放送以外が多い」⇒イベント(例)ご当地アイドル(北九州)【6】以上から、成功事例の共通点は、PLモデルで説明できる。(1)PLの構造:粗利益=売上高-①原価(外注費)[売上高=原価(外注費)+粗利益]。営業利益=粗利益-②販管費(人件費等)[粗利益=販管費+営業利益]。経常利益=営業利益+③営業外利益(損失含む)である。(2)成功事例の戦略を経営指標枠組みで解釈すると、1)②販管費(人件費等)はそれほど動かせない、2)「地域コンテンツ戦略」とは、①原価(外注費)の削減である、(3)「多角化戦略(メディアミックス戦略)」とは、③営業外利益(損失含む)の拡大であり、「CM戦略」は売上拡大である。このように、成功しているコミュニティFMのPL(損益計算書)モデルの構築をした。「地域限定」の視点と「マーケティング」の視点がないと持続的な経営が難しいことがわかった。以上から、原価(外注費)の削減戦略である「地域コンテンツ戦略」と営業外利益(損失含む)の拡大である「多角化戦略(メディアミックス戦略)」と営業利益拡大の「CMの浸透価格戦略」が重要であることがわかった。また、コミュニティFMの社会関係性資本(ソーシャルキャピタル醸成)について、コミュニティFMの地域コンテンツ戦略、メディアミックス戦略、まちづくりへの参加は、社会関係性資本(ソーシャルキャピタル醸成)と調和すると指摘した。地元の取材者、被取材者とネットワークができる。

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