まちづくりのためのクラウドファンディングの分類論(抄)

中谷 雅子

Abstract


【1】本研究では、まちづくりのためのクラウドファンディングの資金調達と広報効果の可能性を考察する。近年、重要となっている地域の衰退に対応するため、地域活性化が国家的課題となっているが、地方には資金がなく、地域金融、市民のための資金調達、地域内での資金循環が大きな課題となっている。しかし資金の調達も、市民から浅く広くやることはコストがかかりすぎ不可能であった。このコストを下げ、可能にしたのがITであり、それにより広く市民から資金の調達をできるようにしたのがクラウドファンディング(CF:インターネットを通じ、資金調達を望む実行者と、それに賛同し小口資金を提供する支援者、それを引き合わせるプラットフォームの3者、もしくは、資金提供を呼びかけるファンドレイザー(FR)が介在する4者により構成される資金調達の仕組み)である。数的には「融資型」が世界、日本とも多くカウントされているが、単なるネットでの告知による融資という見方もあり、その点、他の金融と同じであり、いわゆるクラウドファンディングの典型的形態でないという立場もある。そこで本研究では主として融資型以外の形態を中心に考察した。【2】分類論:(1)CF分類:構成者、支援者の投資スタンス、業登録からA「寄付型A(FR有)」、B「寄付型B(FR無)」、C「購入型」、D「投資型」、E「融資型」、F「株式型」という6類型に分類し、(2)プラットフォーム(PF)分類:時期的には、「Ⅰ期 東日本大震災以前(~2010)」「Ⅱ期 東日本大震災後(2011~2014)」「Ⅲ期 大企業の参入・既存サイトの参入・新たな参入(2015~)」の3期に、サービス内容では、1)寄付型が、「JAPANGIVING」「ふるさとチョイス」「Readyfor Charity」、2)投資型が、「セキュリテ」「宙とぶペンギン」、3)融資型が、「mameo」「クラウドバンク」などで、日本ではこれら以外のPFのほとんどが、4)購入型に入る。本研究では、第Ⅰ期(東日本大震災前)に出現した投資型の代表例「セキュリテ」と、第Ⅱ期(東日本大震後)に出現した購入型中心の「FAAVO」を詳しく取り上げる。(3)プロジェクト分類医:「まちづくり・イベント系」「建築・不動産・設備系」「商品開発・制作・製造系プロジェクト」に3分類できる。購入型は、「街づくり・イベント系」が多く、投資型は「商品開発・制作・製造系」が多いことがわかる。「建築・不動産・設備系」も投資型が多いことがわかる。投資型は、すでに事業を行っている企業が多く、金額も大きい。特に「商品開発・制作・製造系」で新規事業や、事業拡大などにCFを使う事例が多い。購入型が「まちづくり・イベント系」が多いのは、FAAVOが地域密着型のPFで、地域の活性化を主眼においていることも影響していると思われる。【3】プラットフォーム事例として、第Ⅶ章では投資型「セキュリテ」を、第Ⅷ章では、購入型「FAAVO大阪」を研究した。【4】プロジェクト事例としては、「伊根油屋の舟屋『「雅」』ファンド」「あまみ温泉南天苑ファンド」「とろさば料理専門店SABAR」「みてアート(御幣島芸術祭)(FAAVO大阪)」を調査した。【5】「投資資金の回収モデル」として、損益シミュレーション、「投資額を回収できるということなので分配額が投資額と同額になるリクープ売上」などの重要性を論じた。銀行融資と投資型CFでの資金調達の優位性の比較をした。銀行融資の場合は、売上が少ない場合、返済ができなくなりその分借金が増えることになり、それが積み重なった場合は担保が差し押さえられたりすることもある。そういう意味では、借金が増えるというデメリットである。また、売上が多い場合は、銀行からの融資の場合、売上の多寡によって返済額が変動するものではないので、売上における金利の割合が小さくなるというメリットがある。CFの場合であるが融資ではなく投資ということもあり、売上に応じた返済(分配)ということになっている。そのため、売上が少ない場合は、返済額が減ることになる。これは、経営上、財務状況が悪い場合には、返済が減じられるということは大きなメリットといえる。反対に売り上げが多い場合は、売上に応じた返済(分配)となるので、売上が多ければ、返済(分配)が増えることになる。デメリットは返済額が増えることで高金利となるといえる。ここで、リクープと分配比率の関係の構造を明らかにした。事業家からみると、売上が少なく事業が不調のときには返さなくて良いのが、通常の金融機関からの貸し付けに比べて、最大のメリットである。これを善意の寄付と考えず、あくまで投資として見た場合は、フリーライダーの可能性があるので、PFとしてはまずとにかくリクープまで行き、投資家への義理を果たすことを重視する。したがって、分配比率は、BE(ブレークイーブン)ポイント=リクープまでは高く、とにかく返済することを促し、リクープを超えたら義務は果たしたことになるので、後は事業家に有利になるように設定されている。事業家としてはリクープを超えると大成功である。これによりなぜCFは、リクープまでの分配比率を大きく、それ以後は低く小さく設定しているのかがわかる。【6】「支援者の動機モデル」では、CFのプロジェクトの成功は、重要な支援者層の動機を「援助型支援」「応援型支援」「共感型支援」「趣味型支援」「実利型支援」の5者から考察した。【7】「プラットフォーム広報戦略モデル」では、事業家からみるとCFの非常にメリットは大きいこと、投資型は、調達コストはややかかるが、銀行融資がしてくれない「会員囲い込み」「集客広報効果」「マーケティング」のメリットは非常に大きい。手続きはすべてPFがしてくれる、購入型は、調達コストは非常に優れている。また、投資型ほどではないが、「集客広報効果」「マーケティング」のメリットはあること、などを明らかにした。また、CFが成功するには、「支援者、PFの特性、プロジェクトのマッチング(相性)」が重要なことがわかった。

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