2 種の書物:紙と電子 ―背反する主張、絶対値は同じベクトル―

要旨

背反する二つの書物群の紹介を書評のスタイルで取り上げる。 前半で紹介するのは、次の 2 冊である。 ヒュー・マクガイア&ブライアン・オレアリ編『マニフェスト 本の未来』ボイジャー, 2013,2. オライリー・メディア編『ツール・オブ・チェンジ:本の未来をつくる 12 の戦略』ボイジャー, 2013,11. 共に、図書、雑誌のデジタル・コンテンツ化への現状、変革への挑戦、さらには未来の展望を 述べた書物である。 後半で取り扱うのは、書物のデジタル化、図書、雑誌などの生産、流通過程から、「本」の本質 とはなにかを問う、立場である。具体的には、次の 2 冊である。 福嶋聡『紙の本は、滅びない』ポプラ社, 2014.1. 内沼晋太郎『本の逆襲』朝日出版社, 2013.12. である。 前者の 2 冊は、共に電子書籍や Web 上のデジタル・コンテンツの現在地平や新しい試み、未来 の本の姿を想像し、創造しようとしている。 後者の 2 冊は、オンライン書店や電子書籍をも目配りしながらも、本、本屋の文化的意味や社 会存在価値を信頼し、出版社、書店は滅びないと「本道」を伝道する。 一見、両者の立ち位置は正反対に見える。しかし背反する主張は、実は逆ベクトルの絶対値で 通底している。具体的には、以下の目次紹介を含んだ若干長い新刊紹介を参照されたい。
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