オープンデータとLSTMを用いた犯罪発生の予測及び時間的近接性における考察

要旨

既往研究によれば,犯罪はランダムに発生するわけではなく,時空間的に集積する傾向が見られている.さらに,住宅侵入盗など一部の犯罪には,同一標的に,もしくはその近隣で繰り返し発生する「近接反復被害」といった時空間的近接性が確認されている.この知見に基づき,様々な犯罪予測技法が欧米を中心に開発された.一方,過去の情報を用いて将来の事象を予測することに関しては,深層学習の活用が多くの分野で研究が進められている.犯罪の発生は過去の犯罪事象と関連するのであれば,犯罪予測に深層学習を用いれば,従来と異なるアプローチで行うことが可能となる. 本研究は,犯罪発生における時間的近接性に着目しながら,時系列情報の解析に優れた特徴を有するLSTMネットワークを基に予測モデルを構築し,犯罪予測に用いた.活用したデータとしては,東京都が公開している犯罪認知件数のオープンデータから空き巣,自転車盗及び万引きのデータを抽出し,予測モデルの学習に利用した.その後,学習済みモデルによる予測結果を罪種別に評価し,犯罪予測に深層学習を用いるアプローチの有用性について検討した.また,学習済みモデルの入力層における重みを可視化することで,空き巣,自転車盗及び万引きの発生における時間的近接性についての考察を行った.
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