RDA における“jurisdiction”という語をめぐって -法律著作の関連指示子-

  • 古川 肇

要旨

英語圏の歴代の目録規則において、法令、条文などの法律資料の標目に関する規定群 のなかに jurisdiction という語が頻出する。そして『英米目録規則第 2 版 日本語版』で は、これに対して、筆者の見落としでなければ、一律に「法域」という訳を与えている。 本稿は、この原語および訳語について考察しようとするものである。

RDA付録Iの、資料と個人・家族・団体との関連に関する関連指示子は、Anglo-American Cataloguing Rules, 2nd edition(以下AACR2)21.0Dの役割表示designation of functionを 継承したもの、とも見ることができるが、この表示がわずかcomp., ed., ill., tr.だけであっ たのに、付録Iには著作から個別資料にわたって比較にならない多数の指示子が列挙されて いる。このうち、著作と結合した個人・家族・団体については、本文(19.2/19.3)に対応 して、創作者creator1)に関する関連指示子(I.2.1)と、それ以外の個人・家族・団体に関す る関連指示子(I.2.2)に二分され、前者としてauthorなどが、後者としてhonouree(記念 論文集の被記念者)などが列挙されている。創作者とは、従来の基本記入標目、およびそ れに準じて内容に第一次的に責任を有する共著者を指すと見られる。ちなみに、基本記入 標目の選定については本文の6.27.1に規定されていて、main entryの語はもはや使用されて いないものの、概念は保持されている。

このリストに jurisdiction そのものは存在しないが、この語を含むものとして、I.2.1 に enacting jurisdiction が、I.2.2 に jurisdiction governed が含まれている。jurisdiction を能 動的なものと受動的なものとに二分しているのであるが、付録 I 全体が要するに資料をめぐ る行為者(author の類)や被行為者(honouree の類)などのリストである以上、これに含 まれる jurisdiction を従来のように「法域」と訳して済ませるわけにはゆかない。では何と 訳すか。「国際目録原則覚書」の次の一節に手掛かりがありそうである。

出版済
2014-03-17
セクション
コラム カタロガーのメモ