「地域発」の「地域生活支援」

要旨

本稿では主に知的障害をもつ人たちの支援を例に挙げながら、地域の 一 住民から始まる地域生活支援を「地域発」と定義し、「創造都市」に伴うコミュニ テ ィーの創造とそれを支える人材育成について論じた。障害者を地域で、その生活の 質 (quality of life)を視野に入れて生活支援を行うことが求められている現在、 「ま ちづくり」において支援の視野からあらかじめ検討を加えることが不可欠であ る。そ して、すでにある地域においてはコミュニティー形成機能の改変が必要とされ てい る。いずれにおいても、地域の自発性を創出するには、時代の変化に適合した人 材養 成が必要だからである。第1章では地域生活支援の定義と、現在行なわれている 地域生 活支援を「家族発」「施設発」の2つに分類し、事例をもとにそれぞれの特徴 を、支 援者の原動力・支援の過程・対象となる障害をもつ人たち、という三つの観点 から論 じた。いわゆる当事者ニード、および行政的福祉制度が立ち上げた支援活動の 特徴に 焦点を当てた。第2章では、「家族発」でもなく「施設発」でもない地域生活 支援を 「地域発の地域生活支援」とし、その方法と役割について論じた。「地域発」 という 概念を明確にし、「地域発」登場の社会の背景、そこにおける支援者像を分析 した。 第3章では「地域発」の社会における役割と意義について論じた。「地域発」 の活動の 目的が「誰もが地域であたりまえに暮らすことができるようになる」ことで あること を踏まえて、これまでの取り組みを検証した。そして、その目的達成のため に「地域 発」がもつ役割を大きく二つに分け、その一つである「ひとづくり」につい て、世代 交代という視点から論及した。筆者は、特に10代から20代を「第4世代」と して、その 特徴と彼ら活性化する方法について提言した。筆者は、もう一つの役割を 「顔の見え るまちづくり」と規定して、「まちづくり」をテーマとする意義を述べ て、実現の具 体的方法について、出会い・人と人とのつながり・思いを共有し共に目 標を達成す る、という三つの過程に論及した。そして、終章では目標とするまちの 姿、社会の姿 を明らかにし、まちづくりのリソースとなる「ひと」に不可欠な認識 と、要請される パフォーマンスについて論じた。

Title:Community-Founded Livelihood Support for Handicapped People

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