都市型健康・ソフトバイオ産業クラスター形成の戦略に関する研究―バイオ技術の応用とソフトなサービス産業との融合―

要旨

本論文は、オランダのフードバレーを先行事例として、都市型健康・ソフトバイオ産業クラスターの形成をどうすべきかについて研究するものである。ポーターの産業クラスター理論の観点から分析し、最終的にはクラスター形成が期待されている大阪圏におけるクラスター形成に関する政策を考えることを目標としている。新産業の中でも、健康・ソフトバイオ産業は有望な分野の一つである。社会のトレンドとしても、LOHAS(健康で持続可能なライフスタイル)が急激に広がりを見せ始め、団塊世代のアンチエイジング、生活習慣病予防、介護予防等健康サービスへの関心も高まっている。また、国レベルの政策のみならず、大阪府・大阪市の政策でも重点分野として挙げられている。この論文では、このような流れを踏まえて、新産業創造に向け、まず産業の集積メリットを活用するポーターの「産業クラスター」理論を検討する。ポーターの競争戦略論では、ダイヤモンドモデルと呼ぶ4つの条件を満たすことが成功の条件であるとされている。それらは、(1)要素条件、(2)需要条件、(3)関連産業・支援産業の存在、(4)企業戦略・構造・競合関係、である。これらが、都市型健康・ソフトバイオ産業においてどう解釈されるのか検討する。まず、大阪圏の戦略を考える上でモデル事例として有望視されつつある"フードバレー"と呼ばれるオランダ東部地域の食品産業クラスターの調査結果を分析・評価する。そして、このフード産業のクラスターに対して、ポーターの産業クラスター理論におけるダイヤモンドモデルの4要素に当てはめて分析・整理し、何が原因で、どういう取り組みによって成功に導かれたのか、について考察する。その上で、大阪圏とそこにおける都市型産業クラスターについて、大阪の特性を分析した上で、日本が得意とするバイオテクノロジーの方向性とは何かを探り、それらを踏まえて、大阪圏における課題を考察し、課題解決に向けて地方政府の果たす役割を中心に対応策を考察していくこととする。
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