初等教育段階のプログラミング教育における地域の連携・協働に関する研究 −持続性・地域性・創造性の観点から−

要旨

1. 諸外国と比べると、日本における初等教育段階からのプログラミング教育の導入が大きく遅れていることを踏まえ、文部科学省は学習指導要領を改訂し、2020年度から小学校プログラミング教育が必修化されることになった。教員をサポートするためのプログラミング教育指導者(メンター)人材を育成・確保し、これらの人材を中心とした指導体制を地域で連携・協働して構築していくことは喫緊の課題である。本研究の目的は、初等教育段階のプログラミング教育において、それぞれの地域の実情や特性に応じて、その地域全体でどのように連携・協働するのがよいのかを明らかにすることである。

2. 初等教育段階におけるプログラミング教育のあり方に関しては、メンター人材をどのように安定的かつ持続的に確保するのかという持続性、地域の資源や課題を踏まえて地域全体でどのように指導体制を充実させるのかという地域性、子どもたちの発想力や自発性といった創造力をどのように育成するのかという創造性の3つの観点が重要である。本研究では、総務省が実施したプログラミング教育普及推進事業の実証プロジェクト30件についてこれら3つの観点から評価・分析を行った。

3. その結果、プログラミング教育における地域の連携・協働のあり方について、まず、持続性の観点からは、小学校や大学・高専等やその学生、企業やその社員、市民など、プログラミング教育をめぐる地域の主要な行為主体がメリットを享受できる互恵的な関係を構築することが重要である。また、地域性の観点からは、プログラミング教育に関する地域の資源や課題に関する情報を一元的に管理し、それらを踏まえて主要な行為主体間の調整や、テーマ設定のサポート等の役割を担うプラットフォーム的な機関を形成することが重要である。さらに、創造性の観点からは、子どもたちのスキルや意欲のレベルに応じて、自らの気づきに導く指導法を習得したメンターを育成し、プログラミング教育の質を確保するために、資格認定制度を含めたメンター育成のための仕組みをつくることが重要である。

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