日韓の都市再生における合意形成に関する比較研究

要旨

本研究では、まちづくりや都市再生の計画策定において、手続き的公正という概念を踏まえて、合意形成に至るまでの日韓両国の合意形成プロセスにみられる特徴と相違点について比較分析し、韓国の都市政府が合意形成を行う上で、困難な状況に陥る原因の究明と今後の課題について考察した。

日韓両国の事例の比較研究により解明したのは、次の五点である。

第1に、日韓両国の合意形成のプロセスに関連して、制度的に異なる点について明確にした。

第2に、都市再生事業の合意形成を図るために、必要とされる適正な期間について検討した。事業内容や規模を考慮し、意見調整がなされるまで、十分な合意形成の期間を設定することが重要である。

第3に、都市再生事業の手続きの過程において、反対意見に直面する要因を分析した。市民や利害関係者としては、意見が反映されないまま事業が強行されると、反対の声が強くなる傾向にある。したがって、市民と利害関係者の意見があれば、計画策定を修正できるプロセスを作り出す必要がある。

第4に、行政が都市再生事業を推進するに当たり、市民と利害関係者の参加と協働の方法論について比較検討した。合意形成プロセスに参加する住民と利害関係者の関心、多様な価値観、見解をまとめことができる代表性を取る必要がある。また、市民参加により、決定過程に対して影響力を持つようにし、意思決定システムについての公正感を高めることができる。

第5に、手続き的公正性を高めるための、行政の役割について解明した。行政機関は市民の声に耳を傾けて説明を行うなど、市民を政策策定過程に関与させることが必要である。正当な手続きが行われたと認識する人々は、その決定結果も正当なものとして評価するため、事業主体である行政機関と、市民や利害関係者との信頼関係を形成する取り組みが重要である。

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