ガーデニング産業地域におけるハイブリッド型グリーン/健康ツーリズム都市への発展の可能性

要旨

【1】本研究では、ガーデニング産業(植木・盆栽等)地域における立地条件のグリーン/ヘルスツーリズムのまちづくりへの発展可能性を考察した。事例対象は、植木などのガーデニングの生産量・距離・歴史の条件を当てはめることにより、植木4大産地のうち3つのさいたま市、川口市、稲沢市に、関西の代表的産地である宝塚市をくわえた4都市を事例対象とすることとした。さいたま市の緑地の中心は「見沼田圃地区」、川口市の植木・緑地の中心は「安行地区」、稲沢市の植木の中心は「矢合(やわせ)地区・山崎地区」、緑地の中心は「ワイルドネイチャー周辺」、宝塚の植木・緑の中心地は旧川辺郡長尾村「山本地区」である。こうした政策はハイブリット型グリーン/健康ツーリズム成立にも貢献できる。なぜなら、ウォーキングなどの健康ツーリズムを緑道にそって誘導し、それに、憩いの場を設け、ガーデニング(植木、盆栽等)の販売などを設けることにより観光要素「見る楽しみ」「健康の楽しみ(ウォーキング)」「買う・食べる楽しみ」などを満たすことができるからである。

【2】ハード整備モデル(グリーンロード・ウォーキングロード、サイクリングロードモデル)(1)現代の都市計法におけるハード事業を時系列的に分類すると、都市インフラのテーマの移り変わりは、1)高度経済成長期(1954〜1973年)は、「巨大公共事業」が主流であり、3)人口減少と高齢化・低成長の21世紀には、「健康都市づくり」がテーマとなってきた。これらの背景には、近年、農業の再評価が始まっている。一方、超高齢化社会が到来し、自治体財政も圧迫することから、未病や健康寿命を重視する「健康都市戦略」が重要になってきており、「健康都市連合」「スマートウェルネスシティ」「国際ホリスティックセラピー協会」などのとりくみがある。(2)「ウォーキングロード」の定義は「徒歩生活圏のタウンモビリティ運動」と「自然や文化的資源の散策の為のウォーキング」の観点より整備された道である。(3)「健康都市」ハード整備の先駆事例として、スマートウェルネスシティの系統から、ウォーキングロード整備のお手本としての、高石市の例を分析した。同市では、親水空間を利用し、市民が歩きたくなるような緑の、美しいウォーキングロードを整備している。(4)立地モデル 1)多くの場合、台地が貼り出し、平地に移行する台地の辺に古いまちがつくられる。植木産業は、伝統的集落なので、台地の縁に立地している(図のGI:Gardening Industry area)。2)近郊都市において、交通体系と中心市街地がある。交通体系と中心市街地は、現代に導入されたものなので、平地や河川ぞいにある(図のCC:City Center)。3)グリーンのコア地域は、台地から平地に双方にまたがり広がっている。したがって緑の豊富な環境は、台地(森や林)にも平地(緑地、水系)にも広がっている。(図のGC:Green Core area)。4)したがって、グリーンロードやウォーキングロードは、この3者(グリーンコア地域、ガーデニング産業地域、中心市街地)をむすぶように、「中心とガーデニング産業地域を結ぶルート(まち=産業)」、「中心とグリーンコア地域を結ぶルート(まち=緑)」、「ガーデニング産業地域とグリーンコア地域を結ぶルート(産業=緑)」を基本に、整備し回遊性を高めると効果的であることがわかった。

【3】ソフト戦略モデル「エコ/健康/観光イベントの時系列的な対象事業の発展と連動」(総合政策)(a)もともとのガーデニング産業都市とは、大都市近郊の有利な立地で、グリーン環境に立脚して、ガーデニング産業が発達した都市が存在している。植木産業都市はその例である。(b)ハイブリッド型健康/観光都市への展開モデル(総合政策)を考えることができる。「ソフト政策」として、「ガーデニング+緑のイベント」「緑+健康のイベント」「ガーデニング+緑+健康のイベント」など複合的なハイブリッドイベントをおこない、「観光戦略」にまで発展させた「健康/観光戦略」をとれば、市民参加だけでなく、市外からの集客も期待でき、本来、大都市のマーケットが近い近郊都市の有利な立地であることから、効果は高いものと考える。さらに健康的な飲食を整備すれば、参加者・来訪者は、総合的な観光のメリット「見る楽しみ(緑の環境)」「買う楽しみ(ガーデニング産業)」「食べる楽しみ」「参加して健康になる喜び」を享受でき、総合観光戦略としては恵まれた環境にある。事実、本研究でおこなった4つのガーデニング産業都市では、このような政策のハイブリッド化が進んでいることを示した。

【4】「インセンティブ政策」では、インセンティブ付加事業を連動させることにより観光による経済効果と、地域の交流と健康効果を促進させた医療費削減の経済効果も期待される。川西市の先駆的な事例も紹介した。

【5】「費用対効果分析による持続可能性検証」4つのガーデニング都市のイベント11例中、入場者数が増えていないのは2例程度で、あとは、予算が横ばいか減少しているにもかかわらず、すべて入場者が増加傾向にあり、成功しているといえる。ガーデニング都市では、近年では食(健康)観光とハイブリッド型になっているが、事業が継続すればするほど、参加人数は増加し、一人に対する費用も削減されていることが分かった。
 以上から、複合型政策が成功しているとみなせる。ガーデニング産業地域におけるまちづくりは地場産業である植木等の直売事業から始まり、グリーンツーリズムを活用し、人間の普遍的欲求である健康、健康ツーリズムを変遷しグリーンツーリズムの中に植木等の直売事業を包含し健康ツーリズムをそれぞれ別に行うだけでない同時進行でそのシナジー効果を生み出していることが分かった。健康・観光のまちづくりを活かしたガーデニング都市から健康都市への発展の可能性を示した。

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