観光地域づくり法人(DMO)の分類と課題の検討

要旨

わが国は人口減少と産業空洞化に対抗するため、2000年代から観光立国の方針をとった。観光自身にはニューツーリズム・着地型観光革命がおきており、地元が中心になることを要請されている。そのためには地元にマネジメント力が必要であるが、求められるのは民間のマネジメントであり、これまでの組織では対応できない。そこで海外と同じく自立して稼げるDMO(Destination Management Organization、観光地域づくり法人)と呼ばれる組織が、日本の観光推進を担う中心機関になることを期待される。
 これまでの観光協会より戦略的・機動的なDMOは、2015年、観光庁によりDMO候補法人制度が新設され、2020年3月末現在、全国で162団体が正式認定、119団体が候補法人として申請中で、空前の設立ブームとなっている。しかし、DMOの設立・運営支援に活用できる内閣府の地方創生推進交付金は、独り立ちを前提として原則5年で終了するため、収入基盤が脆弱なDMOは苦境に立つことになり、2020年前後より本来は中長期視点での観光戦略を立案・実践することを期待されている組織そのものが正念場を迎え、淘汰、試練の時期を迎えることになる。いわば、DMOは当初の第1段階を卒業し、進化をもとめられる第2段階に入るといってよい。
 本研究の課題は、このようにより厳しい条件の中で新しい段階に入るDMOは、どのように持続可能でありうるのかという点である。そこでDMOの分類と課題を検討した。
【1】分類論:[連携形態]2020年3月末現在「広域連携DMO」10団体、「地域連携DMO」79団体、「地域DMO」73団体の3区分での認定登録がなされている。[時間軸]これまで8期に分けて認定登録を行っており、第1期(2017年)と第2期(2018年)に全体の43%が登録され、第1期では北海道で6団体の登録が目立つが、第5期(2019年)以降は東北地域での登録が目立つ。[地域別]通期で都道府県別にみると北海道が12団体、長野県が9団体、群馬県が7団体と続くが、地域別にみると中部甲信越地方が44団体と多く、全体の4分の1を占め、観光地域づくりが活発なことが窺える。[法人型]DMOを法人格で分類すると、非営利の「一般社団法人」が64%を占めている。一方、「公益社団法人」「公益財団法人」を名乗るのは、地域連携DMOがそれぞれ87%、100%を占めており、ほとんどが県単位の観光協会からの鞍替え組である。また、営利団体である「株式会社」を名乗るのは、地域DMOが70%を占めており、全般に支援財源比率が他法人形態に比べ相対的に低く、第4期(2018年12月)認定以降の新興DMOに増加傾向が見え、エリア的には東北、中部甲信越に比較的多く存在する。
【2】「DMOのインプットとしての財源特徴」: 新しい財源3分類から、第1指標、第2指標をつくる。[新しい財源3分類]①ビジネス収入(収益自主事業、スポンサーフィー)、②地元収入(年・賛助会費)、③補助金収入(行政補助金、委託事業、目的税)。第1指標=①/財源全体、第2指標=(①+②)/財源全体。第2指標である自主財源比率に応じて、「事業運営型」「バランス型」「行政依存型」とすると、自主財源比率が高い「事業運営型」は株式会社が多い。

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