地域開発をめぐる諸団体の論理とその動態分析-京都市崇仁地区をケーススタディとして-

要旨

本論では、崇仁地区の開発をめぐる諸団体の論理解明を行った。そしてそれを通じて、まちづくりにおける理論的一般化に資することを目的とした。崇仁地区は京都駅から東へ徒歩5分圏内に位置し、嘗て日本最大の被差別部落としての歴史を持つ。そして行政による同和対策事業のきっかけを作った地区という意味で同和施策のメッカという性格をもつが、地区の抱える数々の事情により京都市で最も同和対策事業が遅れた地域として、実際には法律が失効した2002年以降も「一般施策」の活用により同和対策事業が継続されてきた。以降行政とのパートナーシップによりいくつもの事業が展開され2023年には京都市立芸術大学の全面移転をひかえているといった性格を持っている。分析にあたっては京都市議会や第三者委員会における議事録を使用し言語計量分析という客観的手法を用いた。同時に、諸団体の関係者への聞き取り調査を行うことで、実務の声を取り入れることとした。そして動態分析を通じて、「不十分な熟議」ゆえの「調整機能の不在」そしてそれが引き起こす、「計画・実行段階における統合された意思・具体策の欠如」、「相互のアクターが目指す事業における起点と終点の乖離」といった現実を明らかにした。そして最も特筆すべき内容は、「開発構想の策定やそのものの物理的・政策的な範囲の拡大など、地区を取り巻く要因が変化しても、組織の論理・認識そしてまちづくりにおける各組織間の関係には変化が見られない」ということである。

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