食と農を起点とした持続可能な地域循環型まちづくり -フードハブ&バイローカルの視点とハブ拠点の地域商社的役割に注目して-

要旨

1.「地産地消」「食と農のまちづくり」「食と農の安全」などのキーワードが非常に多く使われるようになり、地域活性化、地域振興の立場からも一種のブームになっているといってよいが、それらの事例は、包括性・総合性の問題、理念・コンセプトの課題、高付加価値性の問題、市民参加のしっかりした経営主体=地域商社性の問題などの問題をかかえているものが多い。そこで本研究では、これらの点を備えた持続可能なものを対象とする。具体的には、(1)(包括性・総合性)個々の特定の作物や食材に限らず、包括性・総合性がある。(2)(理念・コンセプト)しっかりした理念・思想があり、それに基づいて「地産地消」「食と農のまちづくり」「食と農の安全」を推進している。(3)(高付加価値性)単なる直販所や組合の販売拠点の運営等でなく、付加価値の創造・提供がある。(4)(市民参加のしっかりした経営主体=地域商社性)地域に利益・価値を還元する採算性とマネジメント・マーケティング能力がある。また、研究方法上の問題として、本研究では、産地消性を実証分析で確認する。本研究では、全国の「地産地消」「食と農のまちづくり」「食と農の安全」など地域づくりのうち、持続可能な優秀なものを研究する。それらは上記の条件がなんらかの形でみたされている。本論文の事例研究では、全国の農と食・地産地消の取り組み事例のうち、①地域の核となる取り組みの開始時期や活動拠点の設置時期から概ね5年以上経過して、現在も活発に活動が続いている、②プロジェクトの取組みが民間主導(農協を除く)、③取組みの理念がある④直売がメインではないものについて、農と食を起点とした持続可能なまちづくりの成功要因を調査した。
2.以上の条件から、以下の4事例を対象とした。徳島県「フードハブ・プロジェクト」、新潟県「ステージえんがわ」、奈良県「そにのわ、そにのわの台所katte」、大阪府「THE MARKET」。
3.以上の4事例に共通する持続可能モデルを抽出した。
【川上モデル:地域からの集荷と地域コンセプト(フードハブ・そにのわ)の浸透・付加価値化】(1)地元集荷の実証例=>地産地消をミクロのレベルで実証した。(2)コンセプトの浸透による地域愛着の醸成:1)徳島県神山町:「フードハブ」コンセプト。2)奈良県曽爾村:「そにのわ」コンセプト。
【川中モデル:地域商社機能・コーディネート機能・革新的マネジメント(スマートウェルネス)】(1)地域商社的役割。(2)6次産業化拠点としての機能。(3)コーディネート機能、コミュニティ形成拠点としての機能を併せ持つこと。(4)革新的マネジメント(三条市の「スマートウェルネス」コンセプトを含む)。
【川下モデル:マーケティングの視点と「バイローカル」】(1)コンセプト・デザインへの拘り。(2)「バイローカル」による地域内循環。

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