児童図書出版と図書館-石井桃子と図書館のかかわりから

要旨

戦前から子どもの本の出版・編集・翻訳にかかわってきた石井桃子は、数多くの海外児童文学の編集・翻訳で知られるが、エッセイ等において児童図書館についての言及も多くみられる。さらに自身による家庭文庫の実践は社会に大きな影響を与えた。本研究では、特に初期の業績をレビューし、石井の図書館とのかかわりを振り返った。児童図書出版にかかわる初期に出会った米国の児童図書館員による児童文学批評や、海外視察時における児童図書館関係者との面会が、石井の、図書選択力・批評力を重視した児童図書館像・児童図書館員の仕事観を作り上げてきた。それを基礎に据えて児童図書出版・編集に取り組む石井の姿勢が、児童図書に関しての石井の著作や子ども文庫への信頼感をはぐくんできたといえる。
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