小規模橋梁を対象とした住民参加型橋梁点検システムの構築

要旨

 大量の橋梁群の更新時期が迫っている.橋梁の寿命は約 50 年であり,国土交通省 の発表では,2031 年には日本国内の 53%の橋梁が高齢化を迎える.橋梁のアセットマネ ジメントには,日常の基本的な点検データの把握が重要であるが,財政難の問題に加えて, 点検担当技術者の不足により現状把握ができていない橋梁も多く,特に市町村管理下にあ る小型橋梁において,老朽化対策が間に合わない可能性が出ている.本研究では,住民と 行政が協力して地域課題を解決するガバメント 2.0 の動きに着目し,情報通信技術と携帯 端末を利用した「小規模橋梁を対象にした住民参加型橋梁点検システム」を提案する.橋 梁の損傷の早期発見を図るための「通常点検」に関して,本研究で開発した Android ア プリケーションを用いることで,専門知識を持たない地域住民による点検の実施と維持管 理支援に足るデータの収集が可能であることを示す.また,点検データの蓄積・共有を容 易にし,用紙への記入では難しい検索・比較・画像閲覧などを一元的な形で可能にする. 構築したシステムは,改善を目指してヒアリング調査を行い,より適切なシステム構築研 究に対するフィードバックとしている.また,住民による橋梁点検が可能になることによ り,公共構造物に対する意識の変化に役立つものとする.
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