低コストで実現する災害時における安否情報の共有 ― 住民と地域組織の協働に着目して ―

要旨

2016 年 4 月に発生した熊本地震によって,災害に対する取組みの難しさが改めて 浮き彫りとなった.東日本大震災のさまざまな教訓によって,私たちの災害に対する意 識は大きく変化し,自助,共助,公助が連携し取組むことが不可欠であることが再認識 された.しかしながら,高齢者の安全確保,災害時要援護者や在宅被災者など多様な被 災者の存在,災害時の人的リソースの著しい不足など人命に関する課題は喫緊の対応が 求められている.本研究では,災害時における被災者の把握と情報共有を迅速に行うた め避難所における紙媒体での「避難者名簿」をデータ化することを試みた.「低コス ト」,「避難所運営の効率化」,「使い慣れた手段」および「高齢社会への対応」を柱に 「協働型安否情報の共有」を提案した.具体的には,オープンソースソフトウェアを用 いて安否情報の登録用アプリケーションを作成し,低コストでの実現と避難所運営の効 率化を図るとともに,住民協働に着目した.スマートフォンを用い,災害時に住民自ら が安否情報を登録することで,地域コミュニティ組織と情報の共有を図る.地域住民, 自治会役員,自治体職員の三つの立場から本提案のしくみについて評価を行い,高齢社 会における有用性,実用化の可能性,さらに今後の課題点について述べる.
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